フラジャイル・ファクトリー
  戯曲集02

ISBN

978-4-89380-371-9

Fragile Factory

定価

2,200円
初版
2008年10月10日
フラジャイル・ファクトリー戯曲集02。戯曲6編を収める。

ごちそうさん

 遠藤晶
家族水入らずの夕餉の最中、息子が結婚したいと打ち明けた。相手は被差別部落に生まれた娘。それを知った家族は、それぞれが胸の内に秘めていた「差別」への思いを明かさざるを得なくなり……。関西の焼肉屋を舞台に繰り広げられる、本邦初"肉を喰らい続ける"演劇

火曜講義

 垣花理恵子
ある火曜日。私たちは、催眠術の権威、シャルコー教授が主催する、「ヒステリーの公開講義」の観客となる。「題材」は、オフィーリアの人格を併せもつ美少女オーギュスティーヌ。新興市民の台頭著しい19世紀後半パリ裏面史と、現代日本が直結する。果たして「観客」は、無言のままでいられるのか。

金の卵の骨

 三浦実夫
就職列車で上京し金の卵たち。念願のデザイン会社独立を目前に、アメリカから来航したIT革命の黒船と、平成大不況のバブル崩壊に翻弄され、絆としてきた夢と希望、愛と友情の絆は霧散。新たな自分探しの旅が始まる……。

夜警

 小里清
小奇麗な新興住宅街の一画に、「ニセ警察官」による犯行現場となった空き家がある。犯人は警察の制服にものを言わせ、婦女子を連れ込んでは、猥褻行為を働いているという。地域住民はニセ者に不安を募らせる一方、容疑者の目星もつけられない本物に憤懣を隠さない。ついには自衛策として、警察官の街への出入りを禁じ、オマワリ狩りまでする始末だ。そんな中、警察オタクの引きこもり青年に、疑惑の目が向けられていく。

ホーム・カミング・ロード

 村尾悦子
老人施設に住む3人の車椅子の老女。ひたすら毛糸をほどき続ける1人の老女が呟いた、「家に帰りたい」と。するとまるで古いセーターがほどけていくように老女たちの過去がほぐれ出す。妻を亡くした老人の前に現れる巨大なおっぱい、観覧車が1周する間に見る母親の夢、海岸を掘っていくうちに戦争に遭遇する兄妹、奇妙な光景と出会いながら老女たちは我が家を目指していく。詩をモチーフにして描く昭和の女性へのオマージュ。

漂流物

 三井快
1年前、妻を海で失った男が、荒涼とした地方の浜辺で海の家を営んでいる。その男は海岸に流れ着くゴミを拾い集めては売り物のように店先に並べている。そんな折、付近の海岸で大きな動物の死体が漂着する。そしてまた漂着するように、自転車で長い旅をしているかに見える少年が現われる。亡き妻の1周忌に、男が流す灯籠船を見て旅を終わらせようとする少年。そして少しずつ明かされる妻の事故の真相。海岸に照り付ける太陽はジリジリと。波は絶え間なく続く。

 Fragile Factory(フラジャイル・ファクトリー)

1年に1本の戯曲作品を書き上げることを目的とした劇作ワークショップ。
2004年、日本劇作家協会主催の戯曲講座で学んだ受講生と、講師を務めた劇作家小里清によって活動を開始する。
唯一の理念は、「書くということは、書き続けるということ」。
これまで生まれた作品は、日本劇作家協会新人戯曲賞・文化庁舞台芸術創作奨励賞・AAF戯曲賞などを受賞したり、最終候補にノミネートされたりしている。
それらを編纂したのが、フラジャイル・ファクトリー戯曲集である。今後も1年に1冊ずつ刊行していく予定。
  
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